子どもがいない一人暮らしの高齢男性
こんにちは、東京都中央区の行政書士・上級相続診断士の山田です。
今回は、「子どもがいない一人暮らしの高齢男性が、信頼できる甥との間で任意後見契約を結び、公正証書遺言で想いを託す」という実例をもとに、老後と相続の安心を確保するための方法についてお話しします。
目次
- ○ 一人暮らしの80歳男性が抱える不安とは?
- ○ 「将来が不安…」を解決する2つの法的制度
- ・① 任意後見契約
- ・② 公正証書遺言
- ○ マンション売却と施設入所のタイミング
- ○ 任意後見契約と遺言の併用がもたらす安心
- ○ まとめ:大切なのは「今」準備を始めること
- ○ 老後や相続に不安がある方は、ぜひご相談ください
一人暮らしの80歳男性が抱える不安とは?
今回のご相談者であるAさん(80歳男性)は、数年前に最愛の奥様を亡くされ、現在は東京都内の分譲マンションに一人でお住まいです。お子様はいらっしゃらず、ご両親もすでに他界。兄弟姉妹はいますが、特に仲が良いわけではなく、現在はその息子、つまりAさんの甥であるBさんと頻繁に連絡を取り合い、何かと生活のサポートを受けているそうです。
Aさんの資産は、お住まいのマンションが固定資産税評価額で約5,000万円、預貯金が300万円ほど。ただし、年金収入は多くなく、仮に将来、介護施設や有料老人ホームに入所するとなれば、初期費用や月々の支払いに対応できるかが不安です。
また、最近は物忘れが増えてきたこともあり、「認知症になったらどうなるのか」「自分の財産をどうやって管理すればいいのか」といった不安を強く感じるようになったといいます。
「将来が不安…」を解決する2つの法的制度
Aさんのように、老後に備えて不安を抱える高齢者にとって、重要な法的手段が2つあります。
① 任意後見契約
任意後見契約とは、まだ判断能力があるうちに、自分が将来、認知症などで判断能力を失った際に、誰に財産管理や医療・介護の手続きをお願いするかを事前に決めておく契約です。
Aさんは、信頼できる甥のBさんに、今後の生活のサポートをお願いしたいと考えていました。Bさんも快諾し、ふたりの間で「任意後見契約」を結ぶことにしました。これにより、将来的にAさんが認知症などで判断能力を失ってしまった場合でも、Bさんが正式に後見人として財産管理や必要な手続きを行うことができるようになります。
この契約は公正証書で作成し、将来「任意後見監督人」が家庭裁判所によって選任された後に、正式に効力が発生します。信頼できる人に任せられるという点が、法定後見制度との大きな違いです。
② 公正証書遺言
Aさんは、将来自分の身の回りの世話をしてくれる甥のBさんに、全財産を相続させたいと考えていました。Bさんは法定相続人ではないため、遺言がなければ財産を取得することはできません。そこで、Aさんは「公正証書遺言」を作成することにしました。
遺言の内容は以下のようなものです:
・すべての財産を甥Bさんに遺贈する
(将来、施設入所のためにマンションを売却する可能性もあるため、個別財産の指定ではなく「すべての財産」とする)
・介護や生活の支援をしてくれたことへの感謝の気持ちを伝える付言事項を記載
・遺言執行者としてBさんを指定
公正証書遺言であれば、内容が明確で証拠力が高く、家庭裁判所の検認も不要なため、スムーズに遺言の実行が可能です。
マンション売却と施設入所のタイミング
Aさんは、施設への入所を希望されていますが、その初期費用や月額費用を預貯金だけではまかないきれないと考えています。そのため、マンションを将来的に売却し、その資金を介護費用に充てる計画です。
任意後見契約を結んでおけば、いざAさんが認知症になったとしても、Bさんが後見人としてマンションの売却手続きや介護施設の入所契約などをスムーズに行うことができます。
このように、「任意後見契約+公正証書遺言」を組み合わせることで、老後の生活の不安を解消しつつ、自分の想いに沿った相続も実現できるのです。
任意後見契約と遺言の併用がもたらす安心
このケースからわかるように、任意後見契約と公正証書遺言は、老後の不安と相続の不安の両方を解決するために非常に有効な制度です。
とくに、以下のような方には強くおすすめできます:
・子どもがいない
・高齢で、近い将来に介護が必要となる可能性がある
・特定の人(甥や姪など)に財産を遺したい
・施設入所や財産処分をスムーズに行いたい
・法定後見人として見知らぬ第三者が選ばれるのが不安
まとめ:大切なのは「今」準備を始めること
判断能力があるうちにしか、任意後見契約や遺言の作成はできません。認知症になってしまってからでは、どれほど信頼している人がいても、その人に財産管理を任せることはできず、法定後見人が選任されることになります。その結果、家族の希望とは違う形で財産や生活が管理されてしまう可能性もあるのです。
Aさんのように、信頼できる甥に面倒を見てもらいながら、安心して老後を過ごすためには、法的な備えが欠かせません。
老後や相続に不安がある方は、ぜひご相談ください
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