家族信託の賢い・効果的な使い方とともに、デメリットも詳しく解説
こんにちは、東京都中央区の行政書士・上級相続診断士の山田です。
近年、「家族信託」という言葉を耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか。高齢化が進む日本において、財産の管理や承継のあり方が重要視される中、家族信託は「柔軟で効果的な財産管理手段」として注目されています。
今回は、家族信託の賢い・効果的な使い方とともに、見落としがちなデメリットについても詳しく解説いたします。ご家族の将来に安心をもたらすためにも、正しい知識を身につけていただければ幸いです。
目次
- ○ 家族信託とは何か?
- ○ 家族信託の賢い使い方
- ・1. 認知症対策としての活用
- ・2. 実家などの不動産管理に有効
- ・3. 二次相続の設計に最適
- ・4. 事業承継にも効果的
- ○ 家族信託のデメリットと注意点
- ・1. 節税効果は限定的
- ・2. 公正証書遺言のような強制力はない
- ・3. 柔軟すぎるがゆえの複雑さ
- ・4. 信託口口座の開設が困難な場合も
- ○ 家族信託は「万能」ではない、しかし「最適解」になることもある
- ○ まとめとご案内
家族信託とは何か?
家族信託とは、信頼できる家族に財産の管理や処分を任せる制度です。正式には「民事信託」と呼ばれ、信託法に基づく法的な仕組みです。委託者(財産の所有者)が受託者(信頼できる家族など)に財産を託し、その管理や処分を任せます。そして、受益者(利益を受ける人)に利益が帰属するという三者関係で成り立ちます。
たとえば、高齢の親が将来の認知症リスクに備えて、自分の息子に財産管理を任せるようなケースが典型的です。
家族信託の賢い使い方
1. 認知症対策としての活用
高齢化社会の日本では、認知症になる方が年々増加しています。もし認知症を発症してしまうと、本人の判断能力が不十分とされ、預貯金の引き出しや不動産の売却といった重要な財産行為ができなくなります。
家族信託を活用しておけば、たとえ委託者が認知症になっても、信託契約に基づいて受託者が財産を管理・運用できるため、柔軟かつ迅速な対応が可能となります。
2. 実家などの不動産管理に有効
たとえば、実家を誰に相続させるのか明確にしていない場合、相続人同士でのトラブルの原因になります。家族信託であらかじめ管理や使用権を定めておくことで、不要な争いを避けることができます。
また、空き家対策としても有効です。不動産を受託者が管理することにより、適切な修繕・賃貸・売却が可能となり、資産の価値を維持することができます。
3. 二次相続の設計に最適
一般的に遺言書では「誰にどの財産を渡すか」までしか決められませんが、家族信託では「一次相続の後、その次は誰に」というように、二次相続以降の流れまで指定できます。
たとえば、「妻に遺して、妻が亡くなった後は長男へ」といった、複数世代にわたる財産承継の計画も可能になります。これにより、遺産分割協議の必要がなくなり、争族リスクを回避できます。
4. 事業承継にも効果的
家業を営んでいる場合、事業承継は非常に重要なテーマです。株式を信託することで、経営権の移転を円滑に行えたり、相続時における分散を防ぐことができます。信託契約で議決権の行使を受託者に限定することで、安定した経営を継続することが可能となります。
家族信託のデメリットと注意点
家族信託は非常に柔軟で強力な制度ですが、当然ながら万能ではありません。以下に代表的なデメリットや注意点を挙げておきます。
1. 節税効果は限定的
家族信託には「節税効果がある」と誤解されることがありますが、基本的には節税制度ではありません。信託財産は委託者の所有とみなされるため、相続税・贈与税の対策には直結しません。節税を目的とする場合は、他の制度(贈与、養子縁組、不動産評価引下げ等)と組み合わせた設計が必要です。
2. 公正証書遺言のような強制力はない
家族信託は契約ですので、他の相続人が不服を申し立てる余地が残されることもあります。信託契約の内容が不明瞭であったり、形式が整っていないと、後のトラブルにつながるおそれがあります。
そのため、遺言書との併用が望ましいケースも多く、特に「遺留分」に配慮した設計が求められます。
3. 柔軟すぎるがゆえの複雑さ
信託契約はオーダーメイドで設計できる点が魅力ですが、その分、内容が複雑になりやすく、専門知識が求められます。また、信託口口座の開設や不動産の名義変更、税務申告など、実務上の手間も少なくありません。
専門家の支援を受けずに安易に進めてしまうと、思わぬ落とし穴にはまる可能性もあります。
4. 信託口口座の開設が困難な場合も
金融機関によっては信託口口座の開設に消極的なところもあります。受託者個人名義の口座では信託財産と私財の区分が不明確になり、トラブルのもとです。家族信託の運用では、信託口口座が不可欠ですので、事前に金融機関に確認しておく必要があります。
家族信託は「万能」ではない、しかし「最適解」になることもある
家族信託は、遺言や成年後見といった他の制度と比べて、非常に柔軟で自由度が高いのが特徴です。一方で、制度としての複雑さや運用上の注意点も多く、十分な理解と設計がなければ逆効果になることもあります。
だからこそ、家族信託を検討する際は「何を目的とするのか」「どのような財産を対象にするのか」「家族の意向はどうか」といった全体設計が重要です。そして、その設計には法律・税務・実務の専門的な視点が欠かせません。
まとめとご案内
本日は、家族信託の賢い使い方とデメリットについてご説明しました。
高齢の親の財産管理や将来の相続対策に悩まれている方にとって、家族信託は非常に心強い選択肢となり得ます。しかし、単独で解決できるものではなく、他の制度(遺言・任意後見・贈与など)との組み合わせが鍵になるケースも多いです。
「我が家には家族信託が向いているのか?」「相続でもめないためにはどう設計すべきか?」といった疑問があれば、どうぞお気軽にご相談ください。ご家族にとって最適な対策を、一緒に考えてまいります。
家族信託の無料相談受付中です。
お電話:03-3552-6332
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