遠縁の親戚の将来に備えるための任意後見契約と公正証書遺言の活用
こんにちは、東京都中央区の行政書士・上級相続診断士の山田です。
今回は、70歳代の女性の方からご相談をいただいた事例をもとに、「遠縁の親戚の将来に備えるための任意後見契約と公正証書遺言の活用」についてお話ししたいと思います。
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目次
ご相談者様の背景とご家族の関係
ご相談いただいたのは、現在70歳代の女性Aさん。数年前にご主人を亡くされ、現在はおひとり暮らしです。
Aさんのご主人には、若いころから親しくしていた「大叔母の娘さん(85歳)」がいます。大叔母というのは、ご主人の祖父母の兄弟姉妹にあたる世代の親戚で、その娘さんということになりますから、Aさんのご主人から見ても少し遠い親戚にあたります。
この大叔母の娘さん、仮にBさんといたしましょう。Bさんにはご自身の子どもがいません。身寄りらしい身寄りもなく、かつては親子のように親しくしていたご主人が、長年にわたりその生活を見守り支えてこられました。
そして、ご主人が他界した現在は、Aさんご自身がその意思を引き継ぐようにして、Bさんの身の回りの世話や通院の付き添いなどをされています。
現在の状況と将来への不安
Bさんは現在、85歳。認知症の兆候もなく、大きな病気もせず、お元気に過ごされています。しかし、年齢を考えれば、将来的には病気や認知症、施設入所といった可能性が高まってくるのは否定できません。
Aさんもそのことを懸念しておられ、「今後、Bさんに何かあったときに、私が手続きできる立場なのか心配」「施設入所の手続きや医療の同意書が必要になったとき、自分はどこまで関われるのだろうか」と、不安を抱えていらっしゃいました。
また、Bさんには不動産資産として自宅があります。施設入所に伴ってその自宅を売却して、入居一時金や毎月の費用に充てる可能性もあります。しかし、他人名義の不動産をAさんが勝手に処分することはもちろんできません。法的な準備がなされていなければ、誰も手出しができないまま、生活や医療に支障が出るという事態にもなりかねないのです。
このような状況を受けて、私はAさんに、任意後見契約と公正証書遺言の両方をお勧めいたしました。
任意後見契約とは何か?
任意後見契約とは、本人が元気なうちに、将来判断能力が低下したときに備えて、自分の代理人(後見人)をあらかじめ決めておく契約です。公証役場で「公正証書」の形で作成する必要があります。
今回のケースでいえば、Bさんが元気な今のうちに、Aさんを「将来の後見人」として任意後見契約を結んでおけば、Bさんが将来認知症などで判断能力が衰えたときに、Aさんが後見人として病院の手続き、施設入所、さらには財産管理までできるようになります。
特に、Bさんのように身寄りが少なく、実子などの近親者がいない場合は、信頼できる第三者(Aさんのような方)と任意後見契約を結ぶことが、将来の安心につながります。
ただし、契約を結ぶだけで後見が始まるわけではありません。実際に判断能力が低下したときに、家庭裁判所で「任意後見監督人」の選任がされて初めて、任意後見人の権限が発生します。
つまり、元気なうちに「準備」として契約を交わし、必要になったときに実際に「発動」される、という仕組みです。
公正証書遺言もあわせて考える理由
もうひとつ重要なのが、公正証書遺言です。Bさんには子どもがいませんので、将来的にその財産を誰に遺すかをはっきりさせておくことが重要です。
今回のケースでいえば、長年にわたり面倒を見てきたご主人、そして今なお支えてくれているAさんに感謝の気持ちをこめて財産を遺したい、とお考えになるのも自然な流れでしょう。
しかし、遺言書がない場合、相続は法律で定められた範囲で自動的に進んでしまいます。場合によっては、まったく関わりのなかった遠縁の法定相続人に相続される可能性もあるのです。
そこで、公正証書遺言の出番です。Bさんが元気なうちに、Aさんに遺贈する内容を含めた遺言書を作成しておけば、亡くなった後の財産の行き先が明確になります。公正証書形式なら偽造・紛失の心配もなく、確実性が高い方法といえます。
任意後見と遺言をセットで準備する意義
任意後見契約と公正証書遺言は、それぞれ異なる目的をもっていますが、両方を整えておくことで「生きている間」と「亡くなった後」の両方をカバーする、万全の備えが可能となります。
・任意後見契約:
Bさんが病気や認知症になったとき、Aさんが代わりに手続き・財産管理できる
・公正証書遺言:
亡くなった後、Aさんに確実に財産を遺すことができる
このように、法的に支援体制を整えておくことで、AさんにとってもBさんにとっても、安心感のある老後と相続の準備が整うのです。
まとめとご提案
AさんとBさんのように、血縁関係が遠くても、長年にわたり実際に支え合ってきた絆のある関係は、法律的にも丁寧に尊重されるべきです。
しかし、そのためには「法的な手続き」による裏付けが欠かせません。任意後見契約と公正証書遺言は、まさにそうした想いを形にするツールです。
もし、みなさまの周囲にも、遠縁の親戚の方のお世話をされている方がいらっしゃいましたら、ぜひこの制度の活用をご検討ください。
ご相談は無料で承っております。制度の詳しい説明や、公正証書の作成、公証役場との連携、家庭裁判所への申立てサポートまで、ワンストップで対応いたします。
どうぞお気軽にお問い合わせください。
行政書士オフィス未来計画(東京都中央区)
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メール:info@future-design.info
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