1.特定技能制度の全体像
特定技能は、人手不足が深刻な産業分野において、一定の技能と日本語能力を備えた外国人材を受け入れるための在留資格です。受入れの前提として、各分野ごとの技能評価試験・日本語評価(一般に日本語能力試験N4相当以上)を満たすことが求められます。また、受入れ企業には適正な雇用管理、支援計画の実施、生活・職場への定着支援などが課されます。
2.特定技能1号と2号の違い
(1)特定技能1号の位置づけ
特定技能1号は、即戦力となる業務に従事できる水準の技能を有する方を対象とし、対象分野は介護、外食、宿泊、農業、建設関連、製造関連など幅広く設定されています。原則として家族帯同は認められず、在留期間の上限が設けられているのが特徴です。
(2)特定技能2号の位置づけ
特定技能2号は、より熟練した技能を要する業務に従事できる人材向けで、在留期間の上限撤廃や家族帯同が可能となるなど、長期定着を見据えた設計です。現状は対象分野が限定的で、移行には相応の技能到達と雇用環境が必要になります。
3.在留期限「5年」の基本と誤解
特定技能1号には「在留期間は原則通算で最大5年」という上限があります。この表現だけを見ると「どの分野で働いても合計5年で打ち止め」と理解されがちですが、実務では分野ごとの在留管理が軸になります。分野が変われば必要試験・業務内容・支援計画も変わり、在留資格の変更手続き(農業→外食など)が前提となるため、実務上は分野ごとに最大5年という考え方が採られます。
つまり、同一分野内の転職(農業→農業)では5年枠内で年数が積み上がる一方、分野変更(農業→外食)を行うと、外食分野で新たに最大5年という取り扱いが可能になります。
4.農業→外食への分野変更と年数カウント
ご質問のケースに即して整理すると、現在「特定技能(農業)」で3年在留している方が、外食(飲食)分野の技能試験に合格し、在留資格を「特定技能(外食)」へ変更した場合、外食分野での在留は新たに最大5年が適用されます。結果として、農業3年+外食最大5年=理論上合計8年という就労が見込めることになります。
反対に、同じ農業分野内での転職であれば、在留可能年数は従前のカウントを引き継ぎ、5年の上限から既経過年数を差し引いた残期間内での就労となります。
5.転職・分野変更の手続きフロー
(1)分野試験・日本語要件の確認と合格
外食分野に移行するには、外食分野の技能試験に合格し、日本語能力要件(概ねN4相当以上)を満たしている必要があります。農業分野で既に特定技能1号を持っている場合でも、分野が異なれば改めてその分野の試験が求められます。
(2)受入れ企業の選定と雇用条件の適正化
外食分野の受入れ実績、社会保険・労働関係法令遵守、賃金水準(同等業務の日本人と同等以上)、労働時間、深夜・休日労働の管理体制、ハラスメント対策等を確認します。登録支援機関の支援委託が必要かどうかも事前に擦り合わせます。
(3)登録支援計画の整備
生活オリエンテーション、相談体制、行政手続サポート、日本語学習機会の提供、住居・口座開設・保証人の支援など、実効性のある計画を企業と共同で整えます。分野が変わる以上、計画の作り直しは実務の肝です。
(4)在留資格変更許可申請
「特定技能(農業)」から「特定技能(外食)」への在留資格変更を入管に申請します。雇用契約書、業務内容の説明資料、受入れ体制を示す書面、支援計画、試験合格証明、住居関連資料など、分野要件に適合する客観資料を整えて提出します。
(5)入社・定着支援・更新
許可後は入社・就労開始。支援計画の運用をモニタリングし、定期的に在留期間の更新に必要な資料(勤怠、賃金台帳、社会保険加入状況、支援実施記録など)を蓄積します。
6.転職時の重要な注意点
(1)タイミング設計
現行分野の在留満了直前の分野変更は、書類整備や審査期間の観点からリスクが高まります。3年経過の段階から外食試験の準備、企業選定、支援体制の整備を並行して進めるのが安全です。
(2)「同一分野の転職」との違い
同一分野内の転職は5年上限の範囲で年数が継続カウントされます。分野変更とは審査観点が異なり、外食分野での新規適合性(試験・体制・業務内容)が厳密に問われます。
(3)業務内容の明確化
在留資格変更の審査では、日常的に従事する業務の内容と、その業務が分野要件に適合しているかが重要です。厨房補助・接客・衛生管理・レジ・在庫管理・教育訓練など、外食分野の標準業務を具体的・定量的に記載しましょう。
(4)支援計画の実効性
書面の体裁だけでなく、実際に運用できる体制であることが肝要です。多言語相談窓口、夜間・休日の連絡ルール、体調不良時の医療機関案内、日本語学習の時間確保と費用負担など、運用に耐える計画を提示します。
(5)労務・法令遵守
シフト制・深夜勤務が発生しがちな外食分野では、時間外労働の管理や36協定の整備、最低賃金・割増賃金、年休付与、社会保険の適正加入が焦点になります。審査で突かれやすい部分を先んじて整えておきましょう。
7.事例シミュレーション:農業3年→外食5年
前提:現在は特定技能(農業)で在留・雇用3年。今後、外食分野の技能試験に合格して、飲食業の企業へ転職したい。
(1)年数カウントの結論
外食分野で新たに最長5年の在留が可能と整理できます。したがって、農業3年+外食5年=合計8年の就労の見込みが立ちます。
(2)実務の進め方
3か月〜6か月程度を目安に、外食分野の試験対策→企業選定→雇用条件の内定→支援計画の整備→在留資格変更申請という順で段取りを組みます。審査中のブランクを避けるため、現行の在留期間満了日から逆算して申請のタイミングを計画するのがコツです。
(3)書類のポイント
外食分野の業務内容説明は、衛生管理・オペレーション・顧客対応・教育訓練・改善提案の各項目を、訓練時間・担当比率・KPI(提供時間、クレーム率、衛生点検スコア等)で定量化します。支援計画は、入社後90日・180日・360日の節目で支援レビューを明記し、生活・職場面の課題解決PDCAを示すと説得力が増します。
8.よくある質問(FAQ)
Q. 農業で3年働いたら、外食に移っても残り2年しか働けませんか?
A. いいえ。分野変更(農業→外食)を行い、外食分野の要件を満たしたうえで在留資格変更が許可されれば、外食分野で新たに最大5年の在留が可能と整理できます。
Q. 分野試験に合格すれば必ず分野変更できますか?
A. 試験合格は必要条件ですが、十分条件ではありません。受入れ企業の体制、登録支援計画の実効性、労務・法令遵守、適正な雇用条件など、総合的な適合性が審査対象です。
Q. 家族帯同はできますか?
A. 特定技能1号では原則できません。長期定着を目指す場合は、分野や条件によっては特定技能2号など別の在留資格への移行を検討します。
Q. 同一分野内での転職はどうカウントされますか?
A. 同一分野(例:農業→農業)の場合は、5年上限の枠内でカウントが継続します。新たな5年枠は発生しません。
9.失敗を防ぐチェックリスト
(1)要件確認
外食分野の技能試験・日本語要件を満たしているか。合格証明の原本・写し、本人確認資料、在留カードの期限など基本書類を整えているか。
(2)企業選定
賃金・労働時間・社会保険・安全衛生・教育体制を明文化しているか。外国人受入れの実績があるか。ハラスメント防止・相談体制が機能しているか。
(3)支援計画
生活面の支援(住居、口座開設、医療、行政手続)と職場面の支援(言語サポート、教育、評価面談)が運用可能か。多言語対応の窓口はあるか。
(4)申請設計
在留満了日から逆算したスケジュールを作ったか。補足説明資料(業務フロー図、教育プログラム、衛生管理基準、KPI設計)を用意したか。
10.今すぐご相談ください
特定技能制度は「分野の適合性」と「支援の実効性」が鍵です。農業から外食への分野変更は、試験合格だけでなく、雇用条件の適正化、支援計画の再設計、在留資格変更の説得的な資料化が成否を分けます。当事務所では、
- 在留資格変更許可申請の書類設計と添削
- 業務内容説明・KPI設計・教育プログラムの具体化
- 登録支援計画の作成・運用モニタリング
- 企業側の受入れ体制整備(労務・法令順守の確認支援)
まで一気通貫でサポートしています。外食分野での新しいキャリアを確実に切り拓くために、まずは無料の初回相談で状況をお聞かせください。最短ルートでの許可取得と、入社後の定着までを見据えた実務的なプランをご提案します。
電話番号は03-3552-6332
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