遺言で全て孫に遺贈?遺留分減殺請求権は?

こんにちは、東京都中央区の行政書士・上級相続診断士の山田です
今回は、60歳代の女性からいただいたご相談をもとに、遺言書で相続人以外に全財産を遺贈された場合の対応策について詳しく解説していきます。
このようなケースは、近年とても増えています。高齢の親が、公正証書遺言を作成し、自分の意思で財産を特定の人に遺したいと考えるのは自然なことです。しかし、その結果、他の相続人がまったく財産をもらえない…という事態に直面することもあります。
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目次
- ○ ご相談内容の概要
- ○ 公正証書遺言の効力は?
- ○ 相続人には「遺留分」がある
- ○ 遺留分の割合と計算方法
- ○ 遺留分侵害額請求の手続き
- ○ 注意点:孫は相続人ではない
- ○ 感情的な争いを避けるために
- ○ 最後に:相続でもやもやを抱えたら、まずご相談ください
ご相談内容の概要
今回のご相談者は60歳代の男性で、お母様が令和7年2月に亡くなられたとのこと。お父様はすでに他界されており、相続人はご相談者とそのお姉様、妹様の3人姉妹です。
ところが、お母様は公正証書遺言を残されており、その内容は「妹の娘(つまり孫)に全財産を遺贈する」というものでした。
ご相談者としては、長年親の介護や付き添いをしてきたこともあり、まったく財産がもらえないことに納得がいかないとのことです。
公正証書遺言の効力は?
まず前提として、公正証書遺言は法的に最も確実性が高い遺言書です。公証役場で作成され、2名以上の証人が立ち会うため、形式的な不備で無効になる可能性は極めて低いです。
つまり、「孫に全財産を遺贈する」という内容が記載された公正証書遺言が存在する限り、基本的にはその内容が優先されます。
とはいえ、それですべてが終わるわけではありません。
相続人には「遺留分」がある
遺言によって財産を特定の人物(この場合は孫)に全て遺贈することは可能ですが、法定相続人には「遺留分」という最低限の取り分が認められています。
この遺留分を持っているのは誰かというと、
・子
・直系尊属(両親など)
・配偶者
つまり今回の場合、ご相談者とそのお姉様・妹様は実子ですから、法定相続人として遺留分を持っています。
遺留分の割合と計算方法
直系卑属(子)が相続人である場合、遺留分の割合は全体の1/2です。3人姉妹であれば、法定相続分はそれぞれ1/3ずつ。
したがって、遺留分の計算はこうなります:
相続財産の合計が仮に3000万円だった場合
→ 遺留分総額は 3000万円 × 1/2 = 1500万円
→ 各人の遺留分は 1500万円 ÷ 3 = 500万円
つまり、ご相談者には最低でも500万円の請求権があるということになります。
遺留分侵害額請求の手続き
この遺留分を請求するには、「遺留分侵害額請求」という手続きを行う必要があります。
遺留分侵害額請求のポイント:
・請求期限は、遺言の存在を知ってから1年以内
・相手方(この場合は孫)に対して、金銭での請求が原則
・内容証明郵便で請求意思を伝えることが望ましい
・話し合いがつかなければ、家庭裁判所で調停や訴訟へ
請求の際は、財産評価や法的知識が必要になるため、専門家に相談することが不可欠です。
注意点:孫は相続人ではない
今回のように「孫に遺贈する」というケースは、感情的には理解できますが、孫は法定相続人ではないため、他の相続人から見れば「まったくの第三者」です。
そのため、他の姉妹の遺留分を侵害していることを認識していない場合もあります。
あるいは「祖母の意思を尊重したい」と言って、交渉を拒否する可能性もあります。
ですが、法的には遺留分を持つ姉妹には、請求する正当な権利があります。
感情的な争いを避けるために
遺産相続は、お金の問題であると同時に、感情の問題でもあります。
「なぜ私たちには何も遺してくれなかったのか」という思いから、姉妹間の関係がこじれるケースも珍しくありません。
こうした争いを避けるためにも、第三者である専門家を交えて冷静に対応することが重要です。
また、今後ご自身が遺言を書く立場になったときは、遺留分に十分配慮した内容を心がけることで、円満な相続を実現することができます。
最後に:相続でもやもやを抱えたら、まずご相談ください
もしあなたが今回のように、
「遺言書の内容に納得がいかない」
「本当に何も相続できないのか知りたい」
「遺留分を請求するにはどうすれば?」
ということでお悩みであれば、一人で悩まず、専門家にご相談ください。
遺言や相続の問題は、早期の対応が何よりも大切です。
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