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株式会社と合同会社の合併-注意点などを解説

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こんにちは、東京都中央区のビザ申請専門行政書士の山田です。


今回は、「株式会社が合同会社を吸収合併する場合に注意すべき点」について、法律・税務・登記・労務などの実務の観点から詳しく解説します。

合同会社の増加や組織再編の多様化に伴い、近年この相談が非常に増えています。特に、合同会社を事業母体として立ち上げ、その後株式会社へと発展させるケースでは、両者を統合する「吸収合併」という方法が効果的に活用されています。

しかし一方で、法的な手続の違いや持分と株式の扱いなど、注意すべき点が多いのも事実です。ここでは、実務上の流れやリスクを含めて、わかりやすくご紹介します。

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目次

1. 株式会社による合同会社の吸収合併とは

吸収合併とは、複数の会社を一つにまとめる再編の方法の一つで、存続会社が消滅会社の権利義務をすべて引き継ぎ、消滅会社が消滅する手続です。

今回のケースでは「株式会社が存続会社」「合同会社が消滅会社」となります。会社法第748条〜第750条を根拠としており、法的には包括承継という形で資産・負債・契約関係・従業員などすべてが引き継がれます。したがって、合同会社の資産・債務・契約・雇用関係などは、特別な合意がなくても自動的に株式会社へ移転します。

2. 合併契約書の作成と承認手続

合併を進める際には、まず「合併契約書」を作成します。この書類は、合併の条件を定める極めて重要な文書で、登記申請時にも提出が求められます。主な記載事項は次の通りです。

・合併の方法(吸収合併である旨)
・合併効力発生日
・株式会社が発行する株式の数や内容
・合同会社社員の持分をどのように株式に置き換えるか
・定款変更の有無
・役員構成や事業目的の変更の有無

この契約書をもとに、株式会社側は取締役会(または取締役)で承認し、さらに株主総会で特別決議を経る必要があります。

合同会社側では、会社法第637条により社員全員の同意が必要となります。この同意を得ずに合併を行うことはできません。

3. 合併比率と持分の扱いに注意

合同会社の社員は株主ではなく「持分」を持っています。株式会社に統合される際には、合同会社の持分を株式会社の「株式」に置き換える必要があります。この「合併比率」をどう設定するかが大きなポイントです。

たとえば、合同会社の出資総額が1,000万円で、株式会社の発行株式数が100株(1株10万円)であれば、単純に考えると合同会社の社員に対し100株を割り当てる形になります。

しかし、実際には資産・負債・営業利益などの内容によって価値が異なるため、公認会計士や税理士による企業価値評価を行い、公平な比率を設定することが望まれます。不公平な設定をすると、社員や株主から「不当な合併」として異議申立てを受けるリスクもあります。

4. 債権者保護手続の実施

吸収合併に際して最も重要な法定手続の一つが「債権者保護手続」です。合併により、合同会社の債務を株式会社が引き継ぐことになるため、債権者に不利益を与えないよう、公告と通知を行います。

・官報に公告(原則1回)
・必要に応じて個別通知(借入金やリース契約がある場合など)
・公告から1か月以上の異議申立期間を確保

この期間を経過しなければ、登記手続に進めません。公告証明書は後の登記で必須となるため、行政書士や司法書士に手配を依頼するのが確実です。

5. 登記手続の流れと必要書類

債権者保護手続を終えたら、合併の効力発生日に合わせて登記を行います。株式会社は「合併による変更登記」、合同会社は「合併による解散登記」を申請します。申請先はいずれも本店所在地を管轄する法務局で、期限は効力発生日から2週間以内です。

登記時に必要となる主な書類は次の通りです。

・合併契約書
・株主総会議事録(株式会社)
・社員同意書(合同会社)
・債権者保護公告証明書
・登記申請書
・定款変更後の定款(必要な場合)

登録免許税は、株式会社側の資本金が増加する場合、その増加額に応じて課税されます。

6. 税務上の注意点と「適格合併」

税務面では、吸収合併が「適格合併」と「非適格合併」に分かれます。適格合併とは、法人税法上の一定の要件を満たすことで、資産や負債の時価評価を行わず、課税を繰延べできる制度です。要件の一例としては、以下のようなものがあります。

・株式のみを対価として交付すること
・合併後も事業を継続すること
・合併当事者間に支配関係がある場合など

非適格合併になると、消滅会社の資産が時価評価され、譲渡益課税が発生する場合があります。また、欠損金の引継ぎも制限されるため、事前に税理士と連携してシミュレーションを行うことが重要です。

7. 労務・契約関係の引継ぎ

合併の効力が生じると、合同会社の従業員との労働契約は自動的に株式会社へ移ります。これは「労働契約承継法」に基づくもので、従業員の同意は原則不要です。

しかし、労働条件が大きく変わる場合や勤務地の変更が伴う場合は、事前説明や労使協議が求められることもあります。

また、取引先との契約書の中には、「合併・事業譲渡時には再契約を要する」旨が記載されている場合があるため、事前確認が欠かせません。金融機関との借入契約・リース契約なども同様です。

8. 会計処理の方法

会計上の合併処理には、「パーチェス法」と「持分プーリング法」があります。中小企業では、税務基準に沿って簡便に処理される場合が多く、合併時点の貸借対照表を統合して資産・負債を引き継ぎます。

公正価値との差が生じる場合には「のれん」や「合併差益」として処理することもあります。会計士のサポートを受けながら、財務諸表の整合性を確保することが大切です。

9. 合併後の定款・役員・社名の見直し

合同会社の事業内容を取り込むことで、株式会社の事業目的を拡大するケースが多く見られます。その場合は、定款変更を行う必要があります。

また、商号や役員体制の変更がある場合も、合併登記と同時に申請すると効率的です。特に、合同会社側の代表社員を株式会社の役員として迎え入れるケースでは、事前に取締役・監査役の選任手続きを済ませておくとスムーズです。

10. 合併スケジュールの目安

実際の流れを時系列で整理すると、以下のようになります。

・基本合意・合併契約書の作成(約2週間)
・各社の承認手続(株主・社員総会)
・債権者保護公告と異議申立期間(1か月)
・登記申請・効力発生
・税務署・社会保険などの手続(登記後速やかに)

実務的には、準備から登記完了まで約2か月〜3か月を見込むとよいでしょう。

11. 行政書士が支援できるポイント

株式会社と合同会社の合併は、法務・登記・税務・労務が複雑に絡み合います。行政書士としては、以下のようなサポートが可能です。

・合併契約書・議事録などの法的文書作成
・官報公告・通知手続の代行
・スケジュール管理・書類整備のサポート
・税理士・司法書士・社会保険労務士との連携によるワンストップ支援

とくに中小企業や家族会社の場合、専門家が早期に関与することで手続の重複や漏れを防ぐことができます。

12. 合併を行うメリットとデメリット

合併には、経営の効率化や社会的信用の向上などのメリットがあります。特に、合同会社が保有する事業・ノウハウを株式会社が引き継ぐことで、法人格を一本化し、取引先からの信頼を高められます。また、資本増強・税務統合・ガバナンス強化などの効果も期待できます。あと、資本金が増えるのが「経営管理」ビザを所持している外国人にはメリットになります。

一方で、合併比率の設定や公告手続の負担、会計・税務上のリスクがある点も無視できません。適格合併の要件を満たさない場合、思わぬ課税が発生することもあります。慎重な準備と専門的なアドバイスが不可欠です。

13. 実務上の注意とまとめ

株式会社が合同会社を吸収する場合、特に注意すべき点は次の3つです。

・手続の正確性:公告・決議・登記の順序を誤らない
・公正な合併比率:持分評価を専門家に依頼する
・総合的な引継ぎ:契約・労務・税務の一体管理

これらを確実に実施すれば、トラブルのないスムーズな統合が実現できます。
会社の将来を見据えた組織再編として、戦略的に合併を進めることが重要です。

14. 専門家への相談をおすすめします

合併は、単なる登記変更ではなく「経営上の大きな転換点」です。合併比率の算定、適格合併の要件確認、契約承継、税務処理、社員同意書の作成など、どれも専門的な判断を要します。

行政書士・税理士・司法書士などの専門家がチームで支援することで、リスクを最小限に抑え、確実に合併を実現することができます。

15. 結びに

株式会社と合同会社の吸収合併は、企業の発展や事業承継のステップとして非常に有効です。特に在留資格「経営管理」の要件として「資本金3000万円以上の会社を経営」となったので資本金を増やすのは急務です。

しかし、法律・税務・労務の知識を総合的に理解して進めなければ、後に思わぬトラブルを招くこともあります。

もしご自身の会社で合併を検討されている場合は、早めにご相談ください。制度を正しく理解し、最適な形で組織再編を進めることが、会社の未来を支える第一歩です。

電話番号は03-3552-6332
メールアドレスは  info@future-design.info
あなたの未来計画を応援します。

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