国民年金と生活保護、申請と水際対策への備え

こんにちは、東京都中央区の高齢者に優しい行政書士の山田です。
近年、年金だけでは暮らしていけないという高齢者の方が増えています。
食費や医療費、家賃、光熱費など、最低限の生活費だけでも月十数万円は必要になる時代です。しかし、国民年金の平均受給額は月5〜6万円程度。多くの方が、年金だけでは生活が成り立たず、貯金を取り崩しながら何とか暮らしているというのが現状です。
そんな中で、どうしても生活が苦しくなったときに頼ることができるのが「生活保護制度」です。
生活保護は、憲法第25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を守るために設けられた制度であり、誰でも申請することができます。
しかし実際の現場では、役所の窓口で申請を希望しても「もう少し頑張ってみてください」「お子さんに相談してください」「まだ対象ではありません」と言われ、申請書すら受け取れない、いわゆる「水際作戦」に遭うケースもあります。
本来、生活保護は国民の権利であり、申請を拒まれる理由はありません。
今回は、「国民年金だけを受給している高齢者の方が生活保護を申請する場合」に焦点を当て、申請時に提出すべき書類、注意点、そして水際で断られないための具体的な工夫について、行政書士の視点からわかりやすく解説していきます。
目次
- ○ 国民年金を受け取っていても生活保護は受けられる
- ○ 生活保護の申請は「権利」であり、拒否できない
- ○ 申請の前に整えておきたい基本的な資料
- ○ 申請の流れと決定までの手順
- ○ 水際作戦で断られないための具体的な工夫
- ○ 申請を通しやすくするための現実的なコツ
- ○ 申請後の生活と注意点
- ○ 扶養照会への対応と例外
- ○ まとめ 〜生活保護は「最後のセーフティネット」〜
- ○ 最後に
国民年金を受け取っていても生活保護は受けられる
まず最初に知っておいていただきたいのは、「年金をもらっていても生活保護を受けられる」ということです。
「年金があるから対象外」と思い込んでしまい、申請をあきらめてしまう方が非常に多いのですが、それは誤解です。
生活保護法は、世帯の収入全体が国の定める最低生活費を下回る場合に、その不足分を補う形で保護費を支給する仕組みになっています。
たとえば、単身の高齢者で最低生活費が13万円とされている場合、国民年金が月6万円であれば、不足分の7万円が生活保護費として支給されるという形です。
つまり、生活保護は「全額支給」ではなく「補足支援」。
自分の収入を足しても最低限の生活に届かない部分だけを支える制度です。
生活保護の申請は「権利」であり、拒否できない
生活保護法第7条には、「保護は、申請に基づいて行う」と明記されています。
つまり、申請の意思を示した人に対して、市役所や福祉事務所は申請書の受理を拒むことができません。
これは「国民の権利」として保障されており、役所の裁量で止められるものではないのです。
生活保護法第24条では、申請があった場合には、福祉事務所長が要否を調査し、14日以内(最長30日以内)に結果を通知しなければならないと定められています。
したがって、窓口で「まだ対象ではない」などと言われても、それは法律上の根拠がない対応です。
申請の前に整えておきたい基本的な資料
生活保護を申請する際には、本人確認や生活状況を証明するための資料が必要です。
とはいえ、すべてを完璧にそろえなくても、申請の意思があれば受理されます。
準備できる範囲で持参し、足りない書類は後日提出で構いません。
まず、本人確認のためにマイナンバーカード、運転免許証、健康保険証のいずれかを提出します。
外国籍の方であれば在留カードまたは特別永住者証明書が必要です。
また、同居している家族がいる場合は世帯全員が記載された住民票の写しを添付します。
次に、収入を確認するための資料として、年金証書や年金振込通知書を提出します。
銀行口座の通帳もすべてのページを確認できるように用意し、直近の入出金状況を示します。
年金以外の収入(仕送りやアルバイトなど)がある場合は、その証拠となる振込明細や給与明細を添付します。
資産に関しては、預貯金以外にも生命保険や個人年金などがある場合、保険証券や解約返戻金証明書を提出します。
土地や建物を所有している場合は、固定資産税の納税通知書や登記事項証明書を添付します。
自動車を所有している場合には車検証が必要で、原則として自家用車は処分を求められますが、通院や介護など特別な事情がある場合は例外的に認められることもあります。
住まいに関する書類としては、賃貸借契約書の写し、家賃領収書や振込明細を提出します。
光熱費の請求書なども居住実態の確認資料として役立ちます。
持ち家の場合は、修繕が必要な場合に「住宅維持扶助」が認められることもあります。
医療関係の書類では、健康保険証、介護保険証、要介護認定証、障害者手帳などを提出します。
持病や治療中の病気がある場合には診断書を添付しておくとよいでしょう。
生活保護が開始されると医療扶助が適用され、指定病院で自己負担なく治療が受けられるようになります。
申請の流れと決定までの手順
生活保護の申請は、市区町村の福祉事務所で行います。
まず相談窓口で生活状況を説明し、申請の意思を明確に伝えます。
このとき「相談に来ました」と言ってしまうと、職員が「まず様子を見ましょう」と案内して帰されてしまうことがあります。
必ず最初に「生活保護の申請をしたいです。申請書をください」とはっきり伝えましょう。
申請書の様式は自治体によって異なりますが、基本的には氏名、住所、世帯構成、申請理由(生活困窮のためなど)を記入すれば提出できます。
書類が全部そろっていなくても申請書さえ出せば正式な申請となり、役所は必ず調査と審査を行う義務があります。
申請後、ケースワーカーが家庭訪問を行い、生活実態を確認します。
収入や資産、健康状態、住居環境などを調べ、必要に応じて銀行や年金機構に照会が行われます。
これらの調査を経て、原則14日以内、最長でも30日以内に「保護決定通知書」または「却下通知書」が交付されます。
水際作戦で断られないための具体的な工夫
残念ながら、今でも一部の自治体では「水際作戦」と呼ばれる不適切な対応が行われています。
これは、窓口で相談者を帰らせ、申請を受け付けないようにするものです。
しかし、法的には申請を拒否することはできません。
ここでは、実際の現場で断られないための具体的な方法を紹介します。
まず、最も重要なのは、
「申請する意思をはっきり伝える」
ことです。
最初に「相談したい」ではなく、「申請します」と言葉にするだけで状況が変わります。
この一言で、役所は法的に申請を受理する義務が発生します。
もし職員から「まだ対象ではない」「子どもさんに頼めませんか」などと言われた場合は、冷静にこう伝えましょう。
「子どもには余裕がありません。生活保護法に基づいて申請したいので、申請書を受け取ってください。」
このように落ち着いて、権利を主張する姿勢が大切です。
また、あらかじめ申請書を自分で印刷して記入していくのも効果的です。
各自治体のホームページから申請書をダウンロードし、「生活に困窮しているため申請します」と記入して持参すれば、すぐに提出できます。
職員が受け取らない場合でも、「申請書を提出しますので受理してください」とはっきり伝えましょう。
さらに、申請書を提出した日時と担当者の名前をメモしておくことも重要です。
もし控えをもらえない場合は、簡易書留で郵送するという方法もあります。
郵送した場合、その到着日が申請日として扱われます。
申請を通しやすくするための現実的なコツ
申請時には、生活の厳しさをできるだけ具体的に伝えることが大切です。
「生活が苦しい」と言うだけでなく、
「年金は月6万円で、家賃と光熱費を払うと手元に1万円も残りません」
「病院代が増えて食費を削っています」
といったように、数字や状況を具体的に話すと説得力が増します。
また、職員に不信感を持たせるような強い態度や怒りをぶつけるのは避け、落ち着いて話すことが重要です。
丁寧に、しかし権利はしっかり主張する——この姿勢が、最も確実に申請を通すコツです。
申請後の生活と注意点
生活保護が開始されると、国民年金は引き続き本人の口座に振り込まれます。
ただし、生活保護では年金収入は「収入」として扱われ、その分が保護費から差し引かれます。
つまり、「年金+生活保護費=最低生活費」となるように計算されます。
受給が始まった後も、収入や生活状況に変化があった場合は必ず役所に報告する義務があります。
また、生活保護は「自立支援」を目的とする制度です。
高齢者の場合は、健康管理や介護サービスの利用を通じて、できるだけ安定した生活を維持できるよう支援が行われます。
扶養照会への対応と例外
生活保護の申請を行うと、原則として親族(子どもや兄弟姉妹など)に対して援助が可能かどうかの照会が行われます。
これを「扶養照会」といいます。
しかし、DVや虐待、長年の絶縁など、特別な事情がある場合には照会を行わない運用が認められています。
過去に家庭的なトラブルや心身の被害がある場合は、その旨をしっかり窓口で説明しましょう。
まとめ 〜生活保護は「最後のセーフティネット」〜
生活保護は、恥ずかしいことでも特別なことでもありません。
国が国民の生存を保障するために設けた制度であり、困ったときに支えてくれる「最後のセーフティネット」です。
国民年金だけでは生活が成り立たない方が申請するのは、決して後ろめたいことではありません。
申請する権利はすべての国民に平等にあります。
「もう無理かもしれない」と思ったときが、行動すべきタイミングです。
遠慮せず、まずは福祉事務所に相談してください。
最後に
もし、生活保護の申請でお悩みの方、窓口対応が不安な方、あるいは水際で断られて困っている方がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談ください。
行政手続の専門家として、申請書の作成から窓口同行まで丁寧にサポートいたします。
生活保護は、あなたの人生を支えるための制度です。
必要な方が正当に利用できるよう、安心して申請できる環境づくりをお手伝いします。
電話番号は03-3552-6332
メールアドレスは info@future-design.info
あなたの未来計画を応援します。
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