生活保護の現実と課題―行政書士が解説

こんにちは、東京都中央区の生活困窮者にやさしい行政書士の山田です。
近年、日本では「格差社会」「孤立」「貧困」という言葉を耳にする機会が増えました。中でも、生活保護制度は憲法第25条に基づく“最後のセーフティネット”として、命を守る制度です。しかし現場では、制度を知らない、申請をためらう、窓口で断られるといった課題が今も残っています。
本記事では、行政書士として生活保護の相談に携わる立場から、その実態と問題点、そして社会的課題としての貧困の現状をわかりやすく解説します。
目次
- ○ 生活保護とは何か ― 憲法25条に基づく権利
- ○ 生活保護の4原理と8種類の扶助
- ○ 制度の現状 ― 200万人が利用する「最後の砦」
- ○ 申請の流れと“水際作戦”の問題
- ○ 生活保護受給者の暮らしの実態
- ○ 生活保護をめぐる社会的誤解と偏見
- ○ 貧困の現実 ― データが示す構造的問題
- ○ 支援現場から見える課題 ― 孤立とスティグマ
- ○ 社会的支援の方向性 ― つながりの再構築へ
- ○ 外国人・若年層・高齢者 ― 新たな困窮の広がり
- ○ 「貧困」と「貧乏」の違い ― 自己責任ではない
- ○ これからの社会へ ― 共に支え合う未来の設計
- ○ 行政書士としてのメッセージ
生活保護とは何か ― 憲法25条に基づく権利
日本国憲法第25条は「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と明記しています。これに基づいて1950年に制定されたのが現行の生活保護法です。
目的は大きく2つ。「最低限度の生活の保障」と「自立の助長」です。単にお金を配る制度ではなく、困窮から脱出し、自立して生活を取り戻すまでを支える仕組みなのです。
生活保護の4原理と8種類の扶助
制度の根幹には次の「4つの原理」があります。
・国家責任の原理 ― 国が責任を持って最低生活を保障する
・無差別平等の原理 ― すべての国民に平等に適用
・最低生活の原理 ― 健康で文化的な生活水準を維持
・補足性の原理 ― 自助努力・扶養・他法優先を前提に、どうしても足りない場合に支援
これを具体化するのが「8つの扶助」です。
生活・住宅・教育・医療・介護・出産・生業・葬祭。
それぞれの事情に応じて必要な費用が給付されます。たとえば住宅扶助なら、東京23区では月額上限約6万円台が目安です。医療扶助や介護扶助は現物給付で、病院や介護事業者に直接支払われます。
制度の現状 ― 200万人が利用する「最後の砦」
厚生労働省によると、2025年3月時点で被保護人員は約200万人、被保護世帯数は約165万世帯にのぼります。
世帯別に見ると、
・高齢者世帯:全体の約55%(特に単身が多い)
・障害者・傷病者世帯:約25%
・母子世帯:約4%
と、高齢・障害・単身が中心です。
ただしこれは氷山の一角。日本の「捕捉率(制度を利用できる人のうち実際に利用している割合)」は15〜18%程度とされ、ドイツやフランスの6〜9割に比べると著しく低いのが現実です。つまり「必要なのに使えていない人」が多数存在します。
申請の流れと“水際作戦”の問題
生活保護は申請すれば誰でも受けられる制度ではなく、要件を満たすかどうかが審査されます。
しかし現場では「申請させてもらえない」「家族に連絡されるのが怖い」といった声が後を絶ちません。いわゆる水際作戦です。
実際、福祉事務所の窓口で「まずは相談を」と言われて追い返されるケースもあります。しかし法律上、申請の意思を伝えた時点で受理義務があるのです。
DVや虐待の事情がある場合には扶養照会も免除されるなど、利用者を守るための仕組みも存在します。
もし不当な扱いを受けた場合は、「申請却下」とみなし**審査請求(生活保護法64条)**を行うことができます。これは申請者の重要な権利です。
生活保護受給者の暮らしの実態
最低生活費の基準は地域・世帯構成によって異なります。たとえば令和7年現在、東京23区のモデルケースでは、
・夫婦+子2人世帯:約22万円
・高齢夫婦世帯:約13万円
・母子3人世帯:約21万円
と算定されています。
この額には食費・光熱費・家賃などが含まれ、いわゆる「健康で文化的な最低限度の生活」を維持するための水準です。
しかし、物価上昇が続く中でこの金額では実際の生活が苦しいという声も多く、生活扶助基準の引き下げ(2013〜2015年)をめぐる訴訟では最高裁が2025年6月に『違法』と判断しました。
これは国の判断が専門的根拠を欠き、受給者の生活実態を十分に考慮していなかったとされた画期的な判決です。
生活保護をめぐる社会的誤解と偏見
「働けるのに保護を受けるのはずるい」という偏見が、制度利用の大きな障害になっています。しかし実際には、
・障害や病気で働けない人
・年金だけでは暮らせない高齢者
・シングルマザー・シングルファザー
・派遣切りや倒産で職を失った人
など、誰でも突然、困窮に陥る可能性があります。
また、就労しながら保護を受けている「ワーキングプア層」も増加しています。働いても生活できない――この構造的な問題こそが、貧困の本質です。
貧困の現実 ― データが示す構造的問題
一説によると、日本の相対的貧困率は15%台で推移し、子どもの貧困率も依然として高水準です。
単身で年収127万円以下、4人世帯で253万円以下が貧困ラインとされますが、非正規雇用の増加により「働いても貧しい」層が拡大しています。
母子世帯の3割が「貯金ゼロ」というデータもあります。
こうした「生活不安層」は、生活保護の一歩手前に位置する層であり、制度にたどり着けないまま困窮を深めるケースも少なくありません。
支援現場から見える課題 ― 孤立とスティグマ
ある支援団体では、相談・食料支援を行っています。相談者の多くは「誰にも頼れない」「恥ずかしくて言えない」といった孤立を抱えています。
制度があっても、「恥の意識」や「申請の難しさ」が利用の壁になっているのです。
この「スティグマ(烙印)」の解消こそ、今後の最大の課題といえるでしょう。
社会的支援の方向性 ― つながりの再構築へ
かつての日本では、「家族」「会社」「地域」という3つの縁がセーフティネットの役割を果たしていました。しかし、少子高齢化・非正規労働・核家族化・地方の過疎化が進み、その“含み資産”は崩壊しました。
今必要なのは、外部の公的サービスとしての再構築です。
地域福祉・NPO・行政が連携し、「孤立しない社会」「助けを求めやすい環境」を整えること。
また、教育費や介護費の軽減、最低賃金や給付金による所得底上げも欠かせません。
外国人・若年層・高齢者 ― 新たな困窮の広がり
日本では永住者・定住者など、在留資格を持つ外国人にも生活保護が「準用」されていますが、実際には申請をためらう方が多いのが現状です。
また、若年層や単身高齢者の困窮も増加。
とくに年金受給額が低い高齢者世帯は2035年に562万世帯が生活保護水準以下になると予測されています。社会全体での支援体制の再設計が急務です。
「貧困」と「貧乏」の違い ― 自己責任ではない
貧乏は一時的な経済的困難を指しますが、貧困は構造的に再生産される社会問題です。
教育格差、非正規雇用、医療・住宅アクセスの制限など、個人の努力では解決できない仕組みが背景にあります。
だからこそ、「助けを求めること」は恥ではなく、権利の行使なのです。
これからの社会へ ― 共に支え合う未来の設計
最高裁判決が示したのは、「生活保護は政治的判断ではなく専門的・科学的根拠に基づくべきだ」という原則でした。
私たち行政書士や支援者に求められるのは、法制度を知識としてだけでなく、人を支える道具として活かすことです。
「貧困」は誰か一人の問題ではなく、社会全体の仕組みの結果です。
“つながり”を取り戻す社会の再構築――それが、今求められている方向性だと思います。
行政書士としてのメッセージ
もしあなたやあなたの周りの方が、経済的に困っているなら、どうか一人で悩まないでください。
生活保護は「あなたの権利」です。行政手続きや書類の準備が不安な場合は、専門家にご相談ください。申請同行や書類作成のサポートも可能です。
📞 電話番号は03-3552-6332
📩 メールアドレスは info@future-design.info
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